
こんばんは。くまごろうです。
今回はローレンス・ベンスドープ氏の「強気でも弱気でも横ばいでも機能する高リターン・低ドローダウン戦略」です。
監修者は長岡半太郎氏、訳者は山下恵美子氏です。
以下は、本書の記載内容を私が独自に分類しましたので、ご参考にお使い下さい。

なお、過不足がある場合もあり得ますので、あくまでご参考まで。
はじめに
ドローダウンをいかに抑えるかが目下の課題ということで、Kindleでポチっとしちゃいました。
複数のシステムを組み合わせることでリターンを向上させ、さらにはシャープレシオの改善やドローダウンの抑制も達成していくには、どのように取り組んでいけばよいかといった内容が中心となっています。
比較的シンプルな内容のシステムをベースに、それらのシステム単体のパフォーマンスと、それら複数のシステムを組み合わせた際のパフォーマンスを比較し考察していくといった流れで、本書は構成されています。
なお、本書では最終的に7つのシステムを組み合わせた検証結果までが提示されていますが、ローレンス・ベンスドープ氏自身は50を上回るシステムを組み合わせトレードしているとのことです。
ちなみに本書で最も印象に残ったのは「第10章 不測のリスク――システム7」で、7つ目のシステムとして期待値がマイナスのシステムをあえて取り込むという視点が非常に斬新でした。
この第10章だけでも本書を購入して良かったなと思うくらいの内容でした。
印象に残った文章
ここからは、本書を読んでみて印象に残った文章と、その文章に対しての感想なんかを書いています。
なお、本書を読むまで秘密のままにしたいという方は、ここで一旦引き返していただければと思います。
トレードスタイルはトレーダーの数と同じだけ存在する。しかし、複数のシステムを使った健全で成功するアプローチを作成するには、4つのトレードスタイルのみに集中すればよい。長期トレンドフォローの買い、長期トレンドフォローの売り、平均回帰の買い、平均回帰の売りの4つだ。
第2章 互いに無相関のトレードシステムがうまくいくわけ
バイアンドホールドは「長期トレンドフォローの買い」、アノマリーやイベント投資、アービトラージは「平均回帰の買い」「平均回帰の売り」と考えれば、基本的にはローレンス・ベンスドープ氏のいう4つのトレードスタイルで全て定義できると思います。
ちなみに私自身は「長期トレンドフォローの買い」「平均回帰の買い」の観点を取り込んだ戦略で取引をしています。
一時期、下降トレンドでも利益を出せるような戦略を模索していたのですが、買いと売りという相反するポジションを保有しているというのがどうもしっくりいかず、下降トレンドの際には現金で持つシンプルな戦略に落ち着いたのが理由です。
ただ、実際に戦略として採用するかは別としても、売りの戦略について改めて検証し直してみるいいきっかけにもなるので、また検証に取り組んでいこうかなと思います。
この 表1 のなかには外れ値が1つあることに気づくはずだ。ほかよりもはるかに良い結果を生み出す移動平均が1つある。それは120日SMAだ。このときのMARは0.63である。120日SMAを選ぶことで、このシステムがいかに優れているかを示すこともできるかもしれないが、その結果はいくつかの素晴らしいトレードとランダムさに依存していることだろう。これら2つが組み合わさって、偶然良い結果を生み出したのである。この最良の数値をシステムを代表する数値として示すのは現実的とは言えない。また、そういったアプローチは、実際よりも良いものを生み出すため、自分自身をだますことになる。
第2章 互いに無相関のトレードシステムがうまくいくわけ
システムのパラメータを設定する観点として、複数のパラメータでのパフォーマンスを比較し、あまりに成績の良い、外れ値のパラメータを除外するというのは、非常に重要な観点です。
また、検証に使ったパラメータを並べてみて、ある種の傾向を発見した場合には、信頼度の高いパラメータともいえます。
例えば、バックテストにより以下のような結果が出たとします。
パラメータ | 年次リターン(%) |
---|---|
20 | 13 |
30 | 17 |
40 | 20 |
50 | 18 |
60 | 15 |
恐らく最も良いパフォーマンスは30~50の間にあるのでしょうが、パラメータ:40前後を境に年次リターンが減少していることが分かると思います。
実際のバックテストでは、ある程度でこぼこな年次リターンになると思いますが、こういった傾向があることがバックテストから分かれば信頼度の高いシステムへ一歩進めたことになります。
システムトレードではバックテスト、裁量トレードでは実際の取引記録を元にした検証等、こういった地道な作業がパフォーマンスに繋がるため、手を抜かずに取り組んでいきましょう。
自分のポジションに疑念を抱いたり、ポジションを取るのをためらったりしてはならないし、恐怖を抱いたり、自信をなくしたり、興奮しすぎてもいけない(あまりに多くの利益を出してエキサイトしすぎるとき、それはリスクをとりすぎていることを意味する)。リスクをとりすぎているときに市場が逆行すれば、その興奮は恐怖へと変わる。あなたには欠点のない完璧なトレードを保証する心理状態が必要だ。トップトレーダーたちは、トレードは退屈なもの、と思っている。あなたもトレードは退屈なものなのだと思えば、どの1つのトレードに対しても感情的に思い入れることがないため、トレードシステムを粛々と実行することができる。
第4章 成功するためには、まず自分の目標をはっきりさせよ
「トップトレーダーたちは、トレードは退屈なもの、と思っている。」というのは、実はとても重要な要素です。
「退屈さ」というのは一種の「安定感」ともとれ、トップトレーダーたちは期待値が正の取引を粛々と実行できるからこそ、トップトレーダーとなることができるのです。
私自身はというと、株取引を始めたての頃は小数の銘柄に資金を集中させ、さらにはレバレッジを活用して買い増しをしたりと今では考えられないような取引をしていました。
そのため、目論見通り株価が上がった時には天にも昇るような気持ちになりましたし、目論見が外れ株価が下がった日には真っ青になっていました。
今でもレバレッジを活用しての取引をしていますが、ルールに則っての取引であるため、興奮したり、スリルを感じることはほとんどありません。
ただ、パフォーマンス的な安定感についてはまだまだ改善の余地はありますので、改善に向け一歩ずつ検証等の作業を進めていきたいと思います。
ドローダウンの期間についても質問がある。あなたはどれくらいの期間、水面下に沈み、お金の儲からない時期に耐えられるだろうか。
<中略>
例えば、あなたのシステムが1年に10回しかトレードの機会がなく、ドローダウンが20%になった場合、トレードをする可能性があまりないので、長期にわたってドローダウンの状態が続くことになる。しかし、高頻度システムだとすぐに機会が見つかるので、ドローダウンからはすぐに抜け出すことができる。
第4章 成功するためには、まず自分の目標をはっきりさせよ
トレード計画を立てる上でシグナルの点灯頻度は非常に重要です。
いくら勝率90%の戦略が見つかったとしても、1年に1回もシグナルが点灯しないようであれば、実際の取引では使い物にならないケースが多いです。
というのも、仮にバックテストで良いパフォーマンスを上げていたとしても、そもそもシグナルの点灯頻度が極端に少ないため、戦略の信頼度が置けないためです。
また、先の例でいうと、仮に10%の負けを喫してしまった場合、次のシグナルが点灯するまでの長期間ドローダウンから抜け出すことができなくなってしまい、万が一、次のシグナルが点灯した場合にも負けしまった日には、相当の時間とお金を失ってしまいかねません。
そのため、私の場合は複数の戦略を組み合わせ、平均すると1日に1回以上何らかのシグナルが点灯するような仕組みを取っています。
複数の戦略を組み合わせる場合はシグナルの点灯タイミングが極力重複しないようにしたり、戦略ごとの相関をなくすような工夫が必要になりますが、1つの戦略のみで勝負するよりもはるかに良い結果になることは私自身の経験からいっても間違いありません。
いずれにせよ、相当な自信家でない限りは、ある程度取引頻度を増やすことをオススメします。
組み合わせる無相関のシステムを増やせば増やすほど、ポートフォリオの全体的なボラティリティは低下し、リスク調整済みリターンは上昇する。追加されたシステムは単体システムのポジティブやネガティブの影響力を弱めるため、資産曲線は平滑化され、またトレードのエッジも増加し、それがパフォーマンスを上げていく。リスク調整済みリターンが高ければ、ポジションサイジングはもっとアグレッシブに行うことができ、目標も達成しやすくなる。
第8章 同時にトレードするシステムを増やすほどリターンが高くなるのはなぜか
概ねローレンス・ベンスドープ氏のいう通りなのですが、注意が必要です。
この後の詳しい説明は本書をご覧いただければと思いますが、上記の「無相関のシステム」というのは曲者で、極端なイベントが発生した場合など、システムごとの相関性が崩れてしまった場合は壊滅的な被害を被る可能性があります。
例えば、以下のような2つのシステムを運用しているとします。
- 中小型株の買いシステム
- 大型株の売りシステム
通常時であれば、買いと売りのシステムを併用しているため、マーケット全体のリスクはある程度軽減できますが、例えば、「質への逃避」といった形で個人投資家好みの中小型株が売られ、大型株が買われるような相場となった場合、両方のシステムで損失となってしまいかねません。
そのため、本書でも触れていますが、それぞれのシステムが機能する「前提条件」をしっかりと整理することが重要になってきます。
また、その「前提条件」はどういったイベントが発生するとその条件を満たさなくなるのか、想定し得るケースを事前に洗い出し、可能な限りの想定やテスト・検証をしておくことをオススメします。
複数のシステムをトレードするもう1つのメリットは、口座の残高が多くなってきたときに表れる。もし2~3のシステムしかトレードしていなければ、ポジション(金額)が大きくなりすぎてトレードできないこともある。あなたのトレードによって市場が大きく動くので、エッジがなくなることもある。大手ファンドが少ない出来高でトレードできないのはそのためだ。
第8章 同時にトレードするシステムを増やすほどリターンが高くなるのはなぜか
私自身はまだ流動性を意識するまでの資産規模ではありませんが、シグナルの前提条件の一つに時価総額を取り込んでおり超大型株をあえて除外するような仕組みとしているため、資産規模が大きくなり取引に不都合が生じるようになった際には、前提条件の見直しや追加で新たな戦略を取り込む必要がありますね。
ちなみに「流動性」のリスクについては、こちらの「第6章「原則4――トレードを行う市場を選ぶ」」についてのコメントで触れているので、興味のある方はぜひご覧ください。
このシステムの価値を正しく評価するには、まずはあなたの考え方を変える必要がある。このシステムが定期的に利益を出すことを期待するのではなくて、このシステムは保険だと考えるのだ。多少のコストはかかり、できれば使いたくないシステムだ。しかし、このシステムが本当に必要なときは、あって良かったと心底思うはずだ。
<中略>
このシステムの目的は、正味で利益を出すことではないため、このシステムのパフォーマンスは気にする必要はない。このシステムの目的は、買いシステムが確実に損失を出し、平均回帰の売りシステムが機能しないといった特殊な市場状態のときに利益を出すことである。
年間で出す小さな損失は保険料と考えるのだ。毎年お金がかかるが、本当に悪いことが起こったときには保険金が支払われることになる。
第10章 不測のリスク―― システム7
冒頭でお話しましたが、本書で最も印象に残った箇所です。
こちらのシステムは「カタストロフィーヘッジ」という長期トレンドフォローの売りシステムですが、システム単体のリターンはマイナスであるため、普通に考えれば全く使いものにならないシステムです。(なお、詳細なパフォーマンスは本書をご覧ください)
しかし、「このシステムの目的は買いシステムが確実に損失を出し、平均回帰の売りシステムが機能しないといった特殊な市場状態のときに利益を出すこと」とあるように、「カタストロフィーヘッジ」はそれぞれのシステムが機能しないことを前提条件とした特殊なシステムなのです。
私自身、初めはこのシステムを組み込む必要性をあまり感じなかったのですが、よくよく考えてみると、実際にそれぞれのシステムが機能しなくなった時に、不安からシステムをストップしてしまったり、システム自体を見直してしまわないかと言われれば、否定はできませんでした。
そのため、あらかじめこういった不測の事態を想定しておき、それに応じたシステムを取り込んでいれば、実際にその不測の事態が起きた時に慌てずに済み、心にゆとりを持ったまま長期の下落トレンドをやり過ごすことができます。
実際、周りのパフォーマンスが悪化している中、自分自身のパフォーマンスがあまり悪化しないのであれば、長期の下落トレンド終了後の通常の相場(不測の事態ではない相場という意味)では、資産をさらに伸ばし、その他大勢を大きく引き離すことができるため、心理的なアドバンテージは非常に大きいと思われます。
そもそも他と比べる必要はないのでは?、と思われる方もいるかもしれませんが、戦略を考えたり、実際にその戦略を運用する場合には、必ずベンチマークとなるものが必要になってくるため、絶対的なパフォーマンスの向上に加え、相対的なパフォーマンスを向上させる見込みがあるシステムというのは非常に心強いです。
なお、本書でも触れていますが、「長期トレンドフォローの売りシステム」の取引対象は非常に流動性の高いものであったり、万が一に備えてデリバティブでの複製を考慮したり、実際のシステムに組み込む際には、まだまだ前提条件の整理やバックテストなどを入念に行う必要がありますので、十分な検討をオススメします。
おわりに
本書に記載されている検証結果は提示していませんが、本書の良さを少しでもお伝えできていれば幸いです。
本書は各システムごとの検証結果が豊富で、かつ複数のシステムを組み合わせた結果もふんだんに盛り込まれているため、検証結果を比較しながら読み進めていくと学べることが非常に多いです。
特に「第10章 不測のリスク――システム7」の章だけでも一読の価値があります。
まずは、私自身今まで練ってきた戦略や一旦運用を停止している戦略についても、組み合わせ方次第では価値を生むものがないか、再調査をしてみたいと思います。
おまけ
ポジションサイズや資金管理戦略について私が最も影響を受けた本で、私自身のポジションの扱い方についても記載していますので、ご参考まで。
個人投資家時代に読んだオススメ本なども紹介していますので、こちらもご参考まで。
投資やトレードには読書によるインプットが重要です。
その読書に当たっての私自身の読書術なんかも紹介していますので、こちらもご参考まで。
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