こんばんは。くまごろうです。
今回はトム・バッソ氏の「トレードで成功するための「聖杯」はポジションサイズ」です。
監修者は長岡半太郎氏、訳者は井田京子氏です。
以下は、本書の記載内容を私が独自に分類しましたので、ご参考にお使い下さい。
なお、過不足がある場合もあり得ますので、あくまでご参考まで。
はじめに
私自身、リスク管理やポジションサイズに関する知識に飢えているため衝動買いしてしまいました。
紙の書籍ですと100ページほどでささっと読める文量ですが、とにかくリスク管理、ポジションサイズについて特化した内容となっております。
当ブログで少し前に紹介した、ブレント・ペンフォールド氏の「システムトレード 基本と原則」の中でもリスク管理やポジションサイズについて学ぶことができますが、今回紹介する「トレードで成功するための「聖杯」はポジションサイズ」では、特に以下の3点が印象に残りました。
- ポジションを取った後のポジション管理の方法
- 複数のポジションサイズの管理方法をミックスした管理方法
- ポジションサイズの管理方法を踏まえてのポートフォリオ全体のリスク管理方法
印象に残った文章
ここからは、本書を読んでみて印象に残った文章と、その文章に対しての感想なんかを書いています。
なお、本書を読むまで秘密のままにしたいという方は、ここで一旦引き返していただければと思います。
私はトレンドスタット・キャピタル時代に短期間、ランダムな売買エンジンを作って試していたことがある。もしある資産について一日の終わりにポジションがなければ、コンピューターのなかでコイン投げをして翌朝買うか売るかを決めるという手法だ。それを、トレンドスタットにおける最高のポジションサイズの技術(本書で紹介する方法)を使って管理し、論理的と思われる位置に損切り注文を置き、ある程度分散させるために流動性の高い一〇の先物市場で行うということを、何年ものデータを使ってシミュレーションしてみた。「コイン投げ」の結果は毎回違うため、私は同じことを数千回も繰り返すプログラムを作り、毎回結果を記録していった。結果はどうだっただろうか。もちろん、コイン投げを使った売買エンジンなど使いたくはないが、結果は予想していたとおり、このとき使った市場と期間において、多少の利益を生む傾向が認められた。
第1章 トレードで成功するために必要な三つのこと
ポジションサイズの技術を使うことの威力が分かるテスト結果です。
そもそも、実際に取引を行うに当たっては以下のステップを踏むと考えています。
- 取引前① 取引対象として適切かを調査
- 取引前② 取引するタイミングを計る
- 取引前③ 取引するポジションのサイズを決める
- 取引中④ ポジションを取得する
- 取引中⑤ 取得したポジションを管理する
- 取引後⑥ ポジションを解消する(損益を確定する)
一般的な投資関連の書籍では、どういった企業の株価が将来上がるのか、またどういったタイミングで買えばよいのかといった、上記の①、②について述べているものが多く、③~⑥に焦点を当てたものは数が限られているように見受けられます。
しかし、本文のテスト結果を踏まえると、①、②はたとえランダムであっても、③~⑥を意識することで、多少の利益を生むテスト結果となったということです。
そのため、投資家やトレーダーの方ですでに取り組んでいられる方も多い①、②に加え、ポジションのサイズを決める③から、実際にポジションを解消する⑥までを意識することで、パフォーマンスを向上させ、かつドローダウンも抑えていきましょう、というのが本書の目的になります。
トレードの利益は、売値と買値の差をポジションサイズで掛けた金額になる。式の前半(売値と買値の差)ばかり注目して、後半(ポジションサイズ)を無視するのはまったく意味がない。
第3章 ポジションサイズを管理する理由
トム・バッソ氏のいう通りで、売値と買値の差という「質」についてはよく注目されるのですが、ポジションサイズという「量」については、あまり意識されていないというのが実態ではないでしょうか。
自分の取り得る限界までポジションサイズを高めるというのがもちろんベストですが、売値と買値の差が必ずプラスになるというのは事前には分かりません。
仮にポジションサイズを限界まで高めた上で、売値と買値の差がマイナス、しかもかなりのマイナスになってしまった場合には、マーケットから退場せざるを得なくなってしまいます。
そこで、過去のデータや自身が許容できるリスクなどを踏まえポジションサイズについて深堀りしていきます。
ボラティリティは価格が順行すればポートフォリオを大いに助けてくれるが、逆行すれば断腸の苦しみを味わうかもしれない。ボラティリティは価格の動きであり、その動きが速く大きくなるほど心理的な打撃が大きくなって、戦術をやめたくなる。反対に、価格の動きが緩やかなほど、トレードを続けて市場から利益を取り込むことができる可能性は高くなる。
第5章 仕掛けたポジションのボラティリティを管理する
ボラティリティとは逆行したときはもちろんのこと、実は順行したときにも精神面への負荷が大きくなるため非常に厄介な存在です。
というのも、価格が想定通り順行しタイミングよく利益確定できれば良いのですが、タイミングを逸してしまうと利益を取り損ねた(つまり機会損失)という負の感情を抱いてしまい、その後のトレードへの影響が出かねないからです。
また、価格変動が激しいということはポートフォリオ全体でのリスク管理にも少なからず影響が生じるため、ボラティリティとはうまく付き合っていく必要があります。
ちなみに本書では、ATR(Average True Range)を使った管理方法を解説しています。
資金が少ないときにもう一つできることは、状況が許せば時間枠を短くすることである。私はこれまでさまざまな時間枠を見てきたなかで、長期トレードは単位当たりのリスクが高くなっていく傾向があることに気づいた。一方、短い時間枠のトレードは単位当たりのリスクが低めでポジションサイズに関する規律を守りやすく、それでも最低一枚か、ある程度の株数をトレードすることができる。トレード資金が増えていけば、短期から長期の時間枠に移行していけばよい。
第8章 ポートフォリオの資金の種類
資金量に加え、それぞれの投資スタイルに依存することでもあるのですが、ポジションを保持する時間軸を考えるというのは非常に重要です。
私自身は、ポジションを持ってからすぐに含み益にならないと落ち着いていられない一方、面倒臭がりでもあり、あまり頻繁にはポジションを動かしたくないという一面もあるため、時間軸としては数日~数ヶ月のスイングトレードを主体としています。
というのも、兼業投資家である私自身の場合、相場に張り付く必要があるデイトレードはまず対象外で、また数ヶ月~数年の中長期投資の場合、本文でも述べられている通りリスクが高いのと、ポジションを取ってからポジションを解消するまでの期間が長いために試行回数を稼げないという理由からです。
そのため、資金量が少ない投資家、トレーダーの方だけではなく、兼業投資家である方や投資を始めたてで自分の投資スタイルがまだ明確でない方などは、まず時間軸が数日~数ヶ月の間の時間軸で投資、トレードを始めてみるのが一案かと思います。
そして、資金量が増え、かつ自分自身のより長い時間軸の方が心地いいと思った場合には、時間軸を徐々に変更してみて下さい。
トレード中のポジションサイズの管理は、仕掛けるときのポジションサイズの決め方と同じではない。新しいトレードを仕掛けるときは、資金を維持するためにトレードの損切りポイントを決めておくべきだが、そのリスク水準は市場が順行するか逆行するかで変わってくる。市場が逆行しているときは、損切りを置いたところに近づいていくため、リスクは減っていく。しかし、市場が順行しているとき、特にその動きが速いときは、含み益が増えるのと同時に潜在的なリスクも大きくなる。それでもこれは良いことであり、利益はできるだけ大きくしたい。
第9章 ポジションを仕掛けたあとはどうするのか
私自身、日々取引記録を付け、リスクリワード比は一応意識しているつもりでしたが、「含み益が増えるのと同時に潜在的なリスクも大きくなる」という視点は目から鱗でした。
というのも、リスクリワード比というのは取引の結果であるため、取引後に反省や改善のために活用していたのですが、トム・バッソ氏のこの言葉から、取引中にこそリスク管理に注意を払う必要性を強く感じたからです。
今、考えてみるとマーク・ミネルヴィニ氏も彼の著書「株式トレード 基本と原則」の中で、自身の取引結果を踏まえたリスクリワード比を意識しながら、利益確定のタイミングを計っていることを述べていました。
ただ、マーク・ミネルヴィニ氏の方法は自身のスキルや経験を踏まえた定性的な面が強かったのですが、トム・バッソ氏の方法は彼自身がシステムトレーダーであることからも定量的な方法であったため、非常に参考になりました。
なお、具体的な方法については、本書をご覧いただければと思います。
私は、ポートフォリオ全体のリスク水準は、追加投資をする時期を判断するのに役立つことを発見した。一九の銘柄のリスクがどれもずっと比較的低水準で推移していれば、低リスクで投資できる時期であり、多くの場合、その後はファンドのパフォーマンスが上がり、高値を更新することになる。つまり、顧客が怖がって逃げ出すときは、私が安心してポジションを増やすことができるときなのである。私は顧客にこの話をしてファンドにとどまるよう説得を試みたことがあるが、たいていは失敗に終わった。
第11章 ポートフォリオ全体のリスクを管理する
個々のリスク量や、総資産ベースのネットポジション比などは記録していたのですが、ポートフォリオ全体でどのくらいのリスクを取っているかといった記録は恥ずかしながら付けていませんでした。
まずは記録を付け、その記録から何か傾向や改善点がないか調査してきたいと思います。
投資関連の書籍は基本的に値段が張るものが多いですが、こういった細かな気づきやきっかけを得ることによってパフォーマンスが0.1%でも改善することができれば、書籍代は一瞬で回収できるため、投資家、トレーダーにとっての読書は最高のインプットですね。
特にマーケットで実績を出している人の書籍は、その人自身の失敗談を踏まえた事例も記載されていることが多いため、自分自身が失敗しないためにも、なるべく多くの事例に触れておくことをオススメします。
結局、仕掛けとトレード中に適切なポジションサイズを保ち、ポートフォリオ全体のリスクを制限することは、トレードを勘と経験に頼った賭けとしてではなく、会社の経営と同じように取り組むことなのである。ポジションサイズ戦略はリターンを増やし、リスクとボラティリティを減らし、リターン・リスク比を改善する。これらのことはすべて、すぐそこに迫っているかもしれない厳しい時期を生き延びる助けになる。
第12章 ここまでのまとめ
時折、投資に対するイメージや関連する言葉として、「不労所得」や「ほったらかし」というものを耳にすることがありますが、実際は真逆で最も相容れない言葉だと思います。
というのも本文の「会社の経営と同じように取り組むことなのである」の通り、基本的にはビジネスと同じようなもので、冷たい言い方にはなってしまいますが、収益が上げられない部署、つまり含み損のポジションはすぐに切ってしまう必要がありますし、収益が上がっている部署、つまり含み益のポジションであれば買い増しをを行っていく必要があるからです。
よくあるたとえ話の一つで、自分自身が洋服店を営んでいる例があります。
あなたは洋服店の経営者で白い服、黒い服のみを取り扱っています。
白い服は売り切れ続出です。
一方、黒い服はほとんど売れません。
あなたが洋服店の経営者であれば、白い服の在庫は増やし、黒い服は値引きをしてでも一刻も早く売ってしまいたいと思うのではないでしょうか。
会社の経営と同じように、お客様(=マーケット)が何を欲しているか(=トレンド)を捉え、適切なタイミングで商品・サービス(=ポジション)を提供していくことが重要なのです。
本書で紹介したシミュレーションは、すべて勝率が三五~三八%になっている。つまり、一〇〇回トレードすると平均三五~三八回は利益になるが、残りは損失になる。実は、この勝率は、今回の売買エンジンの期待値よりも少し高かった。私が過去に確認したトレンドフォローモデルの勝率はおおむね三三~三五%程度だったからだ。正しいポジションサイズをしないでトレードするときは、そのことをよく覚えておいてほしい。つまり、トレードの約六七%は損失で終わるということだ。
第14章 自分に適したイクスポージャーを決める
ブレント・ペンフォールド氏の「システムトレード 基本と原則」の中でも同様の記載がありますが、トレンドフォローは基本的に、
- 勝率は3割ほど
- 勝つときは大きく勝ち
- 負けるときは小さく負ける
という特徴があります。
トム・バッソ氏、ブレント・ペンフォールド氏をはじめ、システムトレーダーに当たる人々はトレンドフォローのスタイルを取っている方が非常に多く、私自身もどちらかというとシステムトレーダーよりでトレンドフォローのスタイルを取っていますので、この特徴を許容しています。
この投資スタイルの特徴というのが、自分自身に合うものでなければトレードを継続することができないため、自分自身の望む投資スタイルと実際の取引結果に大きく差異がないかは常にモニタリングしましょう。
私のトレードでは、感情を刺激するような大きな利益や大きな損失は生じない。その一方で、ポジションサイズが小さすぎて日々の作業に注意が向かなくなるほど退屈な結果しか出ないというわけでもない。
<中略>
トレードを始めたばかりの人は、できるだけ小さいポジションサイズから始めるべきだろう。そして、トレードがうまくいき、自分の戦略を長く継続しようと思い、規律が身に付き、トレードの過程に慣れてくれば、少しずつポジションサイズの水準を上げていけばよい。経験を積んでいけば、より大きなポジションサイズを持っているときも、それが正しいポジションサイズだということで安心感がある。間違えるにしても保守的な側にいて、すべてを単純にしておく。トレードを複雑にする必要はどこにもない。 だからこそポジションサイズを適正な水準にして、トレードを楽しんでほしい。
第15章 ポジションサイズの「スイートスポット」に関するミスター冷静沈着の考え方
ポジションサイズというのはリスクを限定的にするためにある程度小さくする必要があるのですが、小さければ小さいほど良いというのでもなく、トム・バッソ氏のいう通り「日々の作業に注意が向かなくなるほど退屈な結果しか出ない」サイズまで小さくしてもいけません。
自分自身の目指すパフォーマンス、リスク許容度、また精神的に安定した状態でいられるか、といった点を総合的に勘案し、自分に合ったポジションサイズを定めていって下さい。
ちなみに私自身はというと、戦略ごとに「定率」の資金管理戦略を用い、総資産の0.1~0.6%のポジションサイズを設定し、日々の取引履歴を振り返りながら、定期的にポジションサイズの見直しも行う、という方法を取っています。
トレードを楽しむためにはマーケットで生き残り続ける必要があります。
マーケットで生き残り続けるためには、適正な水準にポジションサイズを保つことは非常に重要な点ですので、トレードを楽しみながらも絶対に忘れないよう心掛けていきましょう。
おわりに
まだまだお伝えしたいことはたくさんあるのですが、具体的な方法は前提やテスト結果などの前後の流れも踏まえた上で読んだ方がより深く理解できると思いますので、ぜひ一読してみていただければと思います。
また、印象に残った箇所として冒頭で提示した以下の3点については、あまり触れることができませんでしたが、これは前述の通り前提やテスト結果などの前後の流れも踏まえた上で読んだ方がより深く理解できると思ったからです。
- ポジションを取った後のポジション管理の方法
- 複数のポジションサイズの管理方法をミックスした管理方法
- ポジションサイズの管理方法を踏まえてのポートフォリオ全体のリスク管理方法
私自身、最近はリスク管理、ポジションサイジングといった資金管理に対して非常に興味を持っているため、またご紹介できればと思います。
おまけ
ポジションサイズや資金管理戦略について私が最も影響を受けた本で、私自身のポジションの扱い方についても記載していますので、ご参考まで。
個人投資家時代に読んだオススメ本なども紹介していますので、こちらもご参考まで。
投資やトレードには読書によるインプットが重要です。
その読書に当たっての私自身の読書術なんかも紹介していますので、こちらもご参考まで。
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