こんばんは。くまごろうです。
今回はケビン・J・ダービー氏の「アルゴトレード完全攻略への「近道」――より良いトレードシステムを効率的に開発するテクニック」です。
監修者は長岡半太郎氏、訳者は井田京子氏です。
以下は、本書の記載内容を私が独自に分類しましたので、ご参考にお使い下さい。
なお、過不足がある場合もあり得ますので、あくまでご参考まで。
はじめに
本書は自分自身のトレードシステムを開発するためのプロセスや様々なアイデアが凝縮された、主にシステムトレーダー向けの投資本となっていますが、システムトレードに馴染みのない方でも戦略を考える際のヒントやシステムトレーダーの考え方を学ぶことができます。
本書で紹介されているサンプルコードは、TradeStationで用いるEasyLanguageで記述されていますが、考え方やロジックの組み方などは非常に参考になるため、トレードシステムを開発するためのエッセンスを吸収したい方にはオススメできます。
なお、「TradeStation」は、2020年8月7日(金)にマネックス証券でのサービス提供が終了したためご注意ください。
印象に残った文章
ここからは、本書を読んでみて印象に残った文章と、その文章に対しての感想なんかを書いています。
なお、本書を読むまで秘密のままにしたいという方は、ここで一旦引き返していただければと思います。
人気が上がることは諸刃の剣でもある。アルゴトレーダーが増えれば、新たなエッジ(優位性)を見つけて使う人たちが増えるペースも上がる。長年利用されてきたタートルズ系の戦略が機能した時代はとうに過ぎ去った。たくさんのトレーダーがバックテストを行って、同じ有効な戦略にたどり着くことになるからだ。そのことによって、アルゴ戦略の「消費期限」は短くなっていくと思う。
第1章 アルゴトレードは以前よりも難しくなっているのか
この「消費期限」というのは非常に重要な考え方で、私自身も戦略の見直しや、新規戦略について常に頭を捻っています。
例えば、「高値を抜いたら買う」というシンプルなトレンドフォロー戦略です。
市況全体の影響もあるかとは思いますが、少なくとも日本株において、高値を抜いた翌営業日の前場に成行で買うという戦略は、自分が記録している限りでは、ここ最近のパフォーマンスは落ちている印象です。
というのも、
- ここ数年トレンドフォロー・モメンタム系の投資本や、セミナーなどの集まりを目にする機会が増えてきたこと
- 様々な技術の進歩により効率的な情報収集が可能となったため、個人投資家と機関投資家の垣根が低くなり、新しい情報が株価へ折り込まれる時間が短縮化したこと
といった形で、時間をかけてトレンドを形成するというトレンドフォローの前提や環境の変化ではないかと考えています。
もちろん、従来のトレンドフォロー戦略に合致する銘柄もなくはないですが、アベノミクスの初期に比べるとかなり少なくなった印象です。
そのため、我々個人投資家は自分の持つ戦略の鮮度を保つために、常に目をかけていなければなりません。
成功する方法の1つは、みんなと違うことをすればよい。例えば、60分足を使う代わりに59分足や61分足を使うというのはどうだろうか。時間がたつにつれて、60分足を使っている大勢のトレーダーとは違う行動を取るようになっていくはずだ。
第1章 アルゴトレードは以前よりも難しくなっているのか
相場で生き残っている方々を見ると、その人自身の強みや個性といった、その他大勢には持っていない何かを持っている印象が強いです。
この強みや個性を強化していくことで自分自身の投資スタイル、トレードスタイルが確立し、その他大勢とは一線を画すことができます。
また自分自身の投資スタイル、トレードスタイルを確立できているということは、自分自身の許容できるリスクを認識しているともいえます。
そのため、心理的負担を感じることなく粛々と取引に集中できるため、結果として高いパフォーマンスを発揮することができるのです。
どのような試みでも、成功するために本当に必要なことが2つある。それは意欲と才能だ。トレーダーでも配管工でも消防士でもビジネスパーソンでも、本当に成功している人は楽しんで仕事をしている。その仕事が本当にやりたいことなのだ。その仕事が好きな理由は、どんなバカげたことでも百パーセント正しい。そして、好きなことをしていれば、うまくなったり、知識を増やしたり、いずれトップを目指したりする努力も進んで行うようになる。
もちろん、意欲だけでは足りない。才能も必要だ。私は子供のころ、プロのアメリカンフットボール選手になりたかった。意欲は間違いなくあった。しかし、残念ながらやせっぽちで運動神経がない私には才能がなかった。才能と適性がなければ、あまり上達はしない。
第2章 フルタイムのアルゴトレード
「好きこそ物の上手なれ」ということわざがある通り、1つ目の意欲については、感覚的にも理解できる方は多いのではないでしょうか。
例えば、私自身でいうと、決算短信や有価証券報告書の読み込みよりも、株価チャートや財務情報の読み込みからアイデアを掴むことへの関心が強いです。
一方、決算短信の読み込みといった文章からアイデアを掴むことは、後者のチャートや財務情報の読み込みに比べるとあまり得意ではないため、後者のスクリーニングをクリアしたもののみを読むこととし、なるべくリソースを割かないように心がけています。
少し話が長くなりましたが、これは2つ目の才能にも通ずる部分があると思います。
私のように数字を元に価格の動きを読み取ろうとするのが得意な方は、あえて文章を読み込んで分析することにリソースを割くのはもったいないです。
もちろん、全く文章を読む必要ないかと言われればそうではありませんが、少なくとも限られたリソースの配分法としては、より自分の才能や適正がある分野に重点を置いた方が、より良い結果が出るのは間違いないです。
新人トレーダーの10人中8人は、利益のことしか考えていない。私も始めたときはそうだったからよく分かる。しかし、利益は良いトレードに必要なことの半分にすぎない。リスクも極めて重要なのだ。
第3章 アルゴトレードに関する15のヒント
ほぼ全ての方がお金を儲けたい(≒利益を上げたい)からという理由でトレードをしているかと思います。
もちろん私自身もそうですが、トレードを始めたての方は、とにかく利益のことに意識がいきがちです。
しかし、利益を上げるためにはそれ相応のリスク(※)を伴います。
例えば、年率+100%の利益を上げたいと思ったとします。
相当に優位性のある戦略を持っていない限り、年率+100%を得られるかもしれない代償として、資金がゼロもしくはマイナスになってしまう可能性を受け入れなければなりません。
というのも、年率+100%という目標を達成するためには、基本的には信用取引や先物といったレバレッジの活用や、ボラティリティの高い銘柄の取引を中心にしていかなければ、到底達成できる数字ではないからです。
そのため、まずは、
- 失ってもいい資金なのか
- どのくらいの損失なら許容できるのか
といった、許容できるリスクを設定した上で、達成したい利益目標を設定していければいいと思います。
かくいう私自身も高い利益目標を掲げていたため、ここ最近のドローダウンで改めてリスクの存在を再認識したばかりではあります…
(※)リスク…ファイナンスの世界では、ボラティリティや標準偏差ともいいますが、ここでは損失する可能性と定義しています。
多くのトレーダーは、自分はトレンドトレーダーか、平均回帰(カウンタートレンド)トレーダーだと思っている。あるいは、純粋なプライスアクショントレーダー、ローソク足愛好家、スタティスティカルアービトラージの専門家だと思っているかもしれない。
ただ、どう名乗ろうと、結局、みんなトレンドトレーダーなのである。ある価格で買うと、だれでもそれを売るまでは価格が順行することを願う。自分をどう分類しても、このことは変わらない。トレードで利益を上げたければ、トレード中に有利なトレンドが必要になる。
第5章 平均回帰に関する研究
この考え方は非常に面白いと思いました。
確かにダービー氏のいう通り、ポジションを取るということは、ここからは下がらないだろう、下がったとしてもたかが知れているだろう、という認識をしているからこそ、ポジションを取ったということなんですよね。
最初のステップとして、まれな状況(私は10年間のトレードで30回未満のケースと定義している)を除外する。次に、トレード数が多いシナリオ(素早く仕掛けて素早く手仕舞うケース)を除外する。1日に何回もトレードしてトレードコストをかけるよりも、そのシナリオ自体をやめるほうがいい。
第5章 平均回帰に関する研究
まず1点目ですが、サンプルが少ないと戦略として成立するのかの判断ができないため、私自身も見送ることが多いです。
一方、2点目はサンプルが多く取れるため、戦略の優位性が確認できれば、精度の高い戦略と判断でき、私自身は戦略として採用することが多かったのですが、ダービー氏のいう通り、取引コストや誤発注のリスクの増大などを考えると一概に良いともいえないなと感じました。
取引コストや誤発注で不要な損失を被っている今の自分にはとても沁みいる文章です…
どのようなアイデアでも、検証するときは最初から戦略に組み込んでおくことを勧める。最初に戦略を作ってからアイデアを追加してはならない。それをすると、パフォーマンスが改善しなければ、そのアイデアを認めないからだ。これは正しい評価ではない。
そうではなく、良いと思ったアイデアは、戦略を作る最初の段階で試してほしい。
第6章 戦略をリスクから守るテクニック
上で触れた「新人トレーダーの10人中8人は、利益のことしか考えていない。」に通ずるものだと思います。
パフォーマンス(≒利益)を最初に考えるのではなく、アイデア(自分の取れるリスクを念頭に置いたもの)を優先させるべきだと、ダービー氏はいいたいのだと思いました。
例えば、私自身でいうと、ポジションサイズというのをかなり意識していますが、利益を最大化するポジションサイズと、自分自身が心地よいと思えるポジションサイズとは異なります。
利益を優先させたポジションサイズとすると、かなりのドローダウンを許容しなければならず、途中でポジションサイズの変更や取引の停止をしてしまい、結局は取れるはずだった利益を逃してしまいかねません。
そのため、自分自身が許容できるリスクを前提としたポジションサイズルールを設定することが非常に重要です。
かくいう私自身も最近のドローダウンを通じて、だいぶリスクを取っていたなと感じており、身に染みる思いです…
本書から得ることが何かしらあるとすれば、それは必ず検証するということだ。トレードで何が最良かを他人(私も含めて)に聞いてはならない。そうではなく、「聞いて信じても、必ず検証」してほしい。つまり、私が言うことに賛同し、私が良い人間だと思い、私のトレード経験に価値を見いだしたとしても、私が言ったことを必ず自分で検証するということだ。
第9章 リワード・リスクの研究
ダービー氏のいう通り、必ず検証を行うということは、非常に重要な点である一方、私は検証を過信していまうことには警戒が必要だと思っています。
オットー・ビスマルクの格言に「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」というものがありますが、投資、トレードの世界では、私は「皆初めは愚者からスタートする」と思っています。
というのも、期待値がプラスの賭けに長期的にベットし続けることが、投資、トレードの神髄だと考えていますが、この期待値がプラスの賭けを見つけ、従い続けるのが非常に難しいからです。
この「期待値がプラス」というのは曲者で、勝率が90%でも期待値がマイナスの賭けもあれば、勝率が30%でも期待値がプラスの賭けもあるのです。
私自身もそうでしたが、初心者の頃というのは、どうしても勝率にこだわってしまい、中長期的な視野で賭けをすることの重要性に気づきにくいものです。
自分の場合は、投資を始める前にセミナーや書籍で学習済だから問題ない、という考えの方もいらっしゃるかもしれません。
もちろん、様々な知識を得た上で実際の賭けをすることは重要ですが、頭で理解していることと、実際の身銭を切ってマーケットに参戦するのとでは、天と地ほどの差があります。
例えば、検証の結果、勝った時の利益が+30%、負けた時の損失が-10%、勝率が60%、
つまり、期待値が1.14(=1.3×60%+0.9×40%)でプラスの戦略を見つけたとします。
しかし、実際の身銭を切って、この戦略で取引を開始したところ、5連敗してしまいました。
次こそは勝つと信じて取引を継続するか、一度取引を停止して別の観点で再度検証し直すかの判断を求められます。
これこそが経験でしか学べない要素で、検証を過信し過ぎた場合に陥る罠です。
ダービー氏のいう通り、検証を行うこと自体は必須事項ですが、その検証結果をどう咀嚼していくかは必ず経験が必要になるため、まずは少額の資金でも身銭を切ってマーケットに参戦してみることを強くオススメします。
おわりに
具体的な戦略やロジックについては、本書を読んでからのお楽しみにしていただければと思いますが、トレードシステムを開発するためのダービー氏の考え方や熱量を少しでも感じ取っていただければ幸いです。
私自身は、最近トレード戦略の見直しを迫られているため、本書の記載内容をヒントに少しでも改善していこうと思います。
おまけ
ポジションサイズや資金管理戦略について私が最も影響を受けた本で、私自身の事例も記載しています。
個人投資家時代に読んだオススメ本なども紹介していますので、こちらもご参考まで。
投資やトレードには読書によるインプットが重要です。
その読書に当たっての私自身の読書術なんかも紹介しています。
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