
こんばんは。くまごろうです。
今回はブレント・ペンフォールド氏の「システムトレード 基本と原則」で、第1弾になります。
監修者は長尾慎太郎氏、訳者は山口雅裕氏です。
以下は、本書の記載内容を私が独自に分類しましたので、ご参考にお使い下さい。

なお、過不足がある場合もあり得ますので、あくまでご参考まで。
はじめに
本書は、私が今まで読んできた投資関連の書籍の中で最も影響を受け、思い入れのある書籍になります。
なお、題名に「システムトレード」という言葉がありますが、システムトレードに馴染みのない方であっても非常に参考になる書籍となっています。
資金管理について実例を用いて非常に細かく書かれているため、特に以下に該当する方は必読の投資本だと、胸を張って推奨できます。
- 効率よく資金を増やしたい
- 自分なりの戦略や手法を確立したものの、更なる成長のためのきっかけが欲しい
- 1回の取引あたりにどの程度のリスクを取るべきか悩んでいる
なお、今回は、以下の章を紹介していきます。
- 「はじめに」
- 第1章「現実と向き合う」
- 第3章「原則1――準備」
- 第4章「原則2――自己啓発」
- 第5章「原則3――トレーディングスタイルを作る」
- 第6章「原則4――トレードを行う市場を選ぶ」
印象に残った文章
ここからは、本書を読んでみて印象に残った文章と、その文章に対しての感想なんかを書いています。
なお、本書を読むまで秘密のままにしたいという方は、ここで一旦引き返していただければと思います。
私の言いたいことはこうだ。あなたがこの本を含めて、トレーディングの本を読むときに疑わない人なら、今から疑うようにしてほしい。私やほかの著者が何かを書いているからといって、それが必ずしも真実だというわけではない。私は、すべてのトレーダーがトレーディングについて聞いたり見たり読んだりしたあらゆる意見やアイデアに、心を開くべきだと強く信じている。トレーダーは皆、トレーディングについてあらゆる選択肢を受け入れるべきだ。だが、聞いたり見たり読んだりしたアイデアが自分にとって価値があるかどうかを決める権利を、あなたを含めてすべてのトレーダーが手放さないでいるべきだとも思っている。私やほかの著者にとってうまくいくからといって、あなたもうまくいくとは限らない。トレーディングに関するすべてのアイデアを調べたあとは、まず自分でそのアイデアを検証してから評価を下す必要がある。私の意見も含めて、トレーディングに関する他人の意見に頼らないでほしい。この本のようなトレーディング関係の本を読むときには、いつでも懐疑的であってほしい。そして、あなたが信じたことに価値があるかどうかを検証する方法を学んていただきたい。トレーディングでは、懐疑的であることが良い結果につながる。
「はじめに」参照
これは、「はじめに」で作者のブレント・ペンフォールド氏が読者に向けて強く主張しているうちの1つになります。
この文章を初めて読んだ際、ブレント・ペンフォールド氏は全幅の信頼を置ける人物だな、と強く心を打たれました。
「あらゆる選択肢を受け入れるべきだ」。しかし、必ず「自分で検証をし、評価を下す」ことが重要。そして、トレーディングに関しては「懐疑的であれ」。
システムトレードに関わらず、投資を含めビジネスや、私生活全般についても通ずる考え方です。
私自身、投資関連の書籍を読むと、記載された内容をついついすぐにでも試してみたくなってしまうのですが、試す前にまず検証し評価を下す、という意識は忘れてはいけませんね。
また、刀鍛冶が刀を叩いて強くしていくように、投資家・トレーダーとして現状の戦略について常に疑いの目を持ち、叩きあげていかなければならないことを再認識させられました。
大部分のトレーダーは潔く負けられない。彼らは損するのを嫌がる。
<中略>
人は自分の間違いを認めたがらない。ほとんどの人がトレードで負けるのは、潔く負けられないからだ。トレーディングでは損は避け難いということを学べば、成功に向かって具体的に一歩踏み出したことになる。負けを嫌がり続けていると、いつか破産するだろう。長期的に見てトレーディングで成功するには、うまく負けなければならない。
第1章「現実と向き合う」参照
自分自身を含め投資を始めたての頃というのは、負ける=損を確定することに対して、かなりの抵抗があるかと思います。
しかし、柔道の受け身と同じように、投資、特にトレードの世界では負け方を知っていなければ、いずれマーケットからの退場を強いられることになります。
また、野球の世界では3割の打率を継続できる選手は優れた選手といわれており、実は残りの6、7割は打てない(負けることが前提となっている)ので、負けること自体は恥ずかしいことではないのです。
同様にトレーディングにおいても、ある程度の負けを前提とし失敗した時に潔く撤退できるかによってマーケットでの生存確率は大きく変わります。
もちろん、負けを前提とする=勝率を上げるための意識や行動を放棄してもいい、という訳ではありません。
盲目的に「負けてもいい」のではなく、負けるのは致し方ないと認識しつつも、その負ける回数を減らす(つまり勝率を上げる)ために尽力していくことは言うまでもありません。
究極のトレーディング戦略を追及するとき、勝つための奥の手は複雑さにあると多くのトレーダーが思い込む。だれもが負ける以上、トレーディングが単純なはずはないと信じる。もし単純なら、だれでも勝てるはずではないか? 彼らは複雑で難解なトレード法を研究し始める。星に目を向け、ピラミッドの下をのぞき、マーケットの謎を解く「秘密のカギ」を探す。トレーディングとは要するに支持線と抵抗線になりそうな水準を見極めることだという単純な事実を見失う。相場に支持線ができたように思えないのに、なぜ買うのだろうか? 相場が抵抗線にぶつかったと思えないのに、なぜ売るのだろうか? 残念なことに、「賢い」トレーディングを追い求めているうちに、重要なのは単純に支持線と抵抗線の水準だということを見失うのだ。
第1章「現実と向き合う」参照
特にファンダメンタルズの分析を主とする投資家の方の中には、支持線や抵抗線を意識しない方もいらっしゃるかと思いますが、ある企業の株を買うといった行動をする前提として、この企業の株価は今後上がるから買う、という理由があると思います。
つまり、株価は上がる(≒これ以上株価は下がらない)という前提で、取得単価や直近の安値などに無意識のうちに支持線を引いているのです。
好むと好まざるとに関わらず、実は優れた投資家は無意識のうちにトレーダーのように支持線や抵抗線を見定め、結果を残しているのでしょう。
ちなみに、本文では支持線と抵抗線の重要性について言及されていますが、私はこの文章から「ものごとをシンプルに考えること」の重要性も感じました。
私自身、システム的なトレードをしているため常に最適化(※)の問題がつきまとってきますが、極力シンプルに考えることを心掛けており、パラメータを設定する際には「取引回数が多くなり過ぎないこと」を原点とし、極力シンプルに考えることを徹底しています。
(※)最適化…別名、カーブフィッティングともいわれ、過去データを元に最も良いパフォーマンスや最も高い勝率となるよう、パラメータ(変数)を調整すること。例えば、日経平均先物をX日移動平均線がY日移動平均線をゴールデンクロスした場合に買い、20日経過後に売るという投資戦略において、過去10年間の(X、Y)の組み合わせにおけるパフォーマンスが(25、50)は+20%、(30、60)は15%、(33、49)は30%だった場合、今後もその前提が続くと仮定して、3番目の(X、Y)の組み合わせ(33、49)を選択してしてしまうこと。
トレーダーが共通して陥る間違いは、トレーディングの最大リスクは損を出すことだと信じることだ。しかし、トレーディングで最大のリスクはうまくいっている売買ルールをいじることなのだ! 退屈すると、システムを修正して利益をさらに引き出したいという誘惑に駆られる。だが、それは無視する必要がある。
第1章「現実と向き合う」参照
たまたま投資戦略とマーケットの波長が合っていないだけであって投資戦略の優位性に変わりはないのか、はたまた投資戦略の優位性が失われてしまい売買ルールを見直す時期であるのか、私自身、今なお正解というものを持ってはいませんが、頻繁にルールを変更してしまわないよう十分意識しているつもりです。
では、どうすればいいのか? という問いに対して、「ポジションサイズを調整する」というのが、私なりの回答になります。
ある投資戦略のパフォーマンスが冴えない際、通常は総資産の10%の割合を投資していた場合、例えば、総資産の5%の割合を投資するといった具合にポジションサイズを調整することが、今までの経験上、また精神衛生上も良い方法かと思います。
もちろん、投資戦略を一時的に停止(買いシグナルが出ても買わない)というのも一つの考え方ではありますが、仮に投資戦略とマーケットの波長が突然噛み合いパフォーマンスが向上した場合、ポジションを少しでも持っているか、全く持っていないかで精神面への影響度は天と地ほども差がありますのでご参考まで。
トレード計画を立てるとき、損切りの逆指値をひとつは価格、もう一つは時間に基づいた二重のものにしておくようにするべきだ。
<中略>
最もうまく負けるとは、できるだけ早く負けポジションを手仕舞うということだ。
トレーディングで成功する真の秘密はただひとつ。最もうまく負けることだ。だから、これが目標でなければならない。最良の敗者になるためには、上手に損切りできるように常に心掛けなければならない。自分のセットアップをごまかさずに、もっと早く損切りできる方法がないか自問したほうがよい。
第3章「原則1――準備」参照
ポジションを取った後に撤退する「価格」を設定することは、初心者でも比較的容易で、かつマーケットから退場させられないためにも強力な手段かと思います。
一方で意外と忘れやすいのが、撤退する「時間」です。
資産への「時間」の影響は直接的に見えないため意外と忘れがちですが、実は知らず知らずのうちに
- 機会費用の負担・・・ポジションを取っているため資金が拘束され他のポジションを取れない
- マーケットリスクの享受・・・ポジションを取っている=ポジションをリスクにさらしている
- 金利の放棄・・・ポジションを取っていなければ享受できる金利を放棄している
- 金利の負担・・・信用取引によりポジションを取っている場合、信用金利のコストを負担している
といったコストを負担しているのです。
私自身、保有しているポジションについて一定期間想定通りの動きとならなかった場合も撤退していましたが、特段明確な基準を定めることなく撤退していたため、見直しをしたことは言うまでもありません。
ちなみに、私はポジションを取ってから一定期間経過後にマイナスであった場合と、一定期間経過後も指数に劣後していた場合の2つの撤退する「時間」の基準を設けています。
あなたが1回のトレードで使う資金を減らせるなら、破産確率を下げられる。そうすれば、長期にわたってトレーディングを楽しめる可能性はもっと高まる。売買ルールの勝率を上げられるなら、破産確率は下がる。ペイオフレシオは上げられるなら、破産確率は下がり、生き残れる可能性は高まる。結局のところ、あなたがこれらのことを実行するかぎり、どういう方法で破産確率を下げるかは大した問題ではない。大切なのは、統計的な破産確率が0%でない限りトレードを行う資格はないということだ。0%でないのなら、トレードをしないように! 本当にですよ!
第4章「原則2――自己啓発」参照
ここに記載のある破産確率を意識してからリスクの取り方は大きく変わりました。
早期に資産を増加させたいという思いから私自身かなりのリスク選好型で、1回当たりのトレードで取るリスクは総資産の1~2%だったのですが、その後の試行錯誤を経て現在は総資産の0.1~0.6%の間でリスクを取るように変更しました。
取るリスクをそこまで絞ってしまってはリターンも抑え込んでしまうのでは?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実は買い増しのルールを作ることによって対応しています。
まず私自身の中での買い増しとは、最初に取ったポジションが含み益であることが前提です。
含み益が出ているということは取得したタイミングが正しいことをマーケットが証明しているため、リスクが小さいと考えています。
そのため、買い増しを行うことでリスクを抑えつつ、マーケットが想定通り動けばリターンも高めることができるのです。
ちなみに私自身非常に参考とさせてもらっているマーク・ミネルヴィニ氏は、彼の著書「株式トレード 基本と原則」の中で、含み益を使っての買い増しの方法について述べています。
具体的な活用法などは、こちらをご参考に。
あなたはトレンドトレーディングかスイングトレードか、あるいは両方の組み合わせか、いずれかの手法を選ぶ必要がある。多くの成功したトレーダーは普通、トレンドトレーディングとスイングトレードの両方をトレード計画に取り込んでいる。
第5章「原則3――トレーディングスタイルを作る」参照
私自身は元々はトレンドトレーディングの戦略を主体としていましたが、この文書の影響を受けスイングトレードの戦略の見直しを行いました。
その結果、今ではトレンドトレーディングと同等以上に活用し、見事両方の戦略をトレード計画に取り込むまでに至りました。
過去の取引記録を踏まえると、トレンドトレーディング戦略とスイングトレード戦略は互いにうまく補完し合っており、基本的にはどちらかの戦略は振るわなくとも、もう一方のパフォーマンスでカバーするという動きをしています。
そのため、ブレント・ペンフォールド氏が指摘する通り、トレンドトレーディングとスイングトレードの両方をトレード計画に取り込むのは非常に理に適ったものだと実感しています。

2022年7月現在、まだマイナスではありますが…(笑)
普通、ポジションを取るのは簡単だ。だが、最良の敗者になるためには、ポジションを手仕舞いたいと考えたときに、それができることが必要だ。出来高が十分に増えたときにしか手仕舞えないのではダメだ。確実にそれができるように、流動性の極めて高い証券でトレードを行う必要がある。
第6章「原則4――トレードを行う市場を選ぶ」参照
ブレント・ペンフォールド氏のいう通り、流動性の高い証券でトレードするという考えについて、基本的には同じ考え方です。
というのもリーマンショックを経験した投資家の方々の意見を踏まえると、リーマンショックによりマーケットが下落していくことよりも、マーケットの活気(≒流動性)がなくなっていくことの方が恐怖だったとのことでした。
私自身も出来高が非常に少なく板も薄い銘柄を触ったことがありますが、マーケットの雰囲気が悪くなった時の板の様子は、それはそれは恐ろしいものでした。
例えば、2022年7月22日現在の5217 テクノクオーツの板をご覧下さい。

買いと売りで1,780円、最低単元の100株でも178,000円の価格差があるのです。

また、直近では1日の出来高が1,000株を下回っていたりと、買いと売りいずれのポジションを取るにも非常にハードルが高い銘柄です。
一方で、リスクが高いのはもちろんなのですが、流動性のリスクがあるということは、そのリスクに見合うリターンもあることは忘れてはいけません。

こちらは、先ほどの5217 テクノクオーツの直近1年間の株価チャートになりますが、2022年の始め頃の株価は40,000円超でした。
私自身がポジションを取り始めたのは2021年の10月頃でしたので、仮に最高値付近の40,000円で売却できていれば、最低単元でも100万円近い利益を獲得できていたのです。

ちなみに損切りしました…
少し極端な例ではありますが、出来高が少ない(≒流動性が低い)という理由だけでトレード対象から外してしまうのは少しもったいないな、という意見です。
ちなみに私自身、基本的にはブレント・ペンフォールド氏と同様に流動性の低い銘柄はトレード対象から外すことが多いですが、稀に「これは!」という銘柄の場合には細心の注意を払いながらポジションを取ったりします。
荒れ相場やこういった閑散銘柄でない限り、中々流動性を意識する機会は少ないと思いますが、流動性とうまく付き合っていくのもマーケットで生き抜くために必要なことかもしれません。
おわりに
今回は、本書のさわりの部分とブレント・ペンフォールド氏の提唱する原則の1~4を紹介しました。
いずれもトレードの核心となる部分をブレント・ペンフォールド氏自らの言葉で語られ、説得力のある表現ばかりでした。
今回の第6章まででも学べることは非常に多いですが、次回は「資金管理」と「売買ルール」についてで、本書の最もおいしいところを紹介していきます。
最後に、本投稿の中でご紹介してきた書籍について再掲します。
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